2021/08/31 22:29

こんにちは。

masuocafe コーヒー焙煎家益岡悠介です。

新しく販売を開始しましたベトナム産スペシャルティーコーヒーが大変ご好評を頂いています。
早くもリピート購入してくださる方もいらして、本当に嬉しいです。

前回のblogでベトナム産「HOA SELECT2021」のご紹介でベトナム人国際コーヒー鑑定士のホア・グエンさん(以下ホアさんと書きます)の
夢と情熱について書かせていただきました。

今回は、その後2弾、3弾として販売開始した「Mai Coffee Farm×Future Coffee Farm Winey Honey」
「Lang Biang Coffee projectスペシャルティアラビカ(以下、ランビアンと書きます)」について書かせて頂きたいと思います。

※なお、今回のこのブログで掲載する写真はすべて
「Lang Biang Coffee projectスペシャルティアラビカ」の生産にたずさわっておられる
ベトナム在住のバブロスコーヒー・社長 山岡清威さんより頂戴したものです。
ですので、無断での転載等はお控え頂きますようお願い致します。


(上写真・男性が山岡さんです。)

さてそれではツラツラと書き始めたいと思います。
「Mai Coffee Farm×Future Coffee Farm Winey Honey(以下M&Fと書きます)」は、
マイ農園で採取されたコーヒーチェリーを、Future Coffee Farmで精製を行う
というスペシャルタッグを組みことで生まれたコーヒー豆です。

ベトナムでは、品質の高いコーヒーチェリーの栽培ができる農家さんであったとしても
精製のための設備投資にまわすお金が乏しく、そこが弱点である農家さんが存在します。

そこで、「HOA SELECT2021」と「M&F」の2種類は
マイ農園という農園で採れたコーヒーチェリーを、高い精製技術を持つFuture Coffee Farmという農園に運んで精製を行うという手法を取りました。栽培と精製を別の場所で行う新しい取り組みによって生まれたコーヒー豆なのです。

Future Coffee Farmは、masuocafeのお客様にも大人気となっている「ファインロブスタ」を生産している農園です。

これまでベトナム産のほとんどのコーヒー豆は品質は重視されず、いわゆる”コモディティ豆”あるいは”コマーシャル豆”と呼ばれ
インスタントコーヒーや、缶コーヒーに用いられるものが主流でした。
そのため、品質には注意を払われない分、価格も安く買い叩かれてしまうのが実情。
いわゆる薄利多売です。汗水垂らして収穫しても、多くの収入は望めません。

ベトナムのコーヒー農家に限らず、世界のコーヒー農家の方々の多くが、今も豊かな生活とは程遠い生活を余儀なくされています。
コーヒー豆の収入だけでは生活ができないため、農園の仕事がない時期には他の日雇いの仕事に行くこともあるそうです。
それだけでなく、コーヒー豆栽培で生計を立てるのを諦めて、農園を手放してしまう農家も多いことのが実情だそうです。

そんな状況を打開しようと様々な取り組みを始めた先駆者がFuture Coffee Farmの農園主トイ グエンさんです。
品質が良くないことで有名だったベトナムのコーヒー豆を、クオリティ高いコーヒー豆へと進化させることに成功したベトナムコーヒー農家界の希望の星と評されている人物です。



このトイさんの成功を希望にして、ベトナムでは高品質なコーヒー豆を作ろうと考えるコーヒー農家さんが
少しずつ増えてきているのだそうです。

品質の高いコーヒー豆を作ることができれば、それだけ高値で売買をすることができます。
そうなれば、農園さんの抱えるいくつかの問題点は解決に向かい始めることができます。

コーヒー豆の生産者と、コーヒーを楽しむ私たちの間には経済格差がありすぎます。
私たちの国も、昨今、経済格差が広がってきており、全ての人が豊かな生活をしているとは言えない国になってきました。
とはいえ、明日食べるものに心配する人は少ないし、フードロスも大きな問題になっているほど食べ物に溢れています。

農家さんの中には、十分な食料もなかったり、着る服もなかったり、
さらにまともに教育さえ受けれない子供たちもいることも実情です。
日本では大きく報道されませんでしたが、数年前、
ネスレやスターバックスが契約するコーヒー農園で子供が働かされていたことが海外では報じられ大きな問題となりました。
すべてのコーヒー農家でそういったことが行われているわけではありませんが、中にはそういう農家もあることもまた事実です。
またそうしなければならない農家側のやむにやまれない事情があることもまた事実です。農家さんを一方的に責めることはできません。

私たちが日常に買い求めるコーヒー一杯から、農家さんに渡る利益は「約2円」であると言われています。
私たちがおしゃれにラグジュアリーな空間で楽しむコーヒータイムには、現実に誰かの犠牲の上に成り立っているものである可能性があるのです。

コーヒーやカカオなどの農家を対象としたドキュメント映画が話題を集めるなどしていることから
こういった「農家の実情」は、私たちの元へ情報として届けられることが多くなり少しずつ改善しつつあると言われる農家さんの生活ですが、それでもまだまだ是正されているとは言い難い状況です。

「HOA SELECT2021」で日本にベトナム産最高品質コーヒー豆を届けてくれたホアさんと
facebookのメッセンジャーでおしゃべりしていたときのこと、
彼は自分の目標は「ベトナムのコーヒー農家の生活レベルを向上させることだ」と力強く語ってくれました。

ホアさんは、Qグレーダーというスペシャルティコーヒーに関する国際鑑定士であり、コーヒーのスペシャリストです。
Qグレーダーの資格は永年制ではなく更新制で、その試験もとても難しいことで知られています。
そんなプロ中のプロが生産地に身をおく特性を生かし、農家さんの密にコミュニケーションを取り、
さらに高いクオリティのコーヒー豆の生産に向けて心血を注いでいます。

そんなスペシャリストや、一流の農家さんがタッグを組んで
すべてのコーヒー農家の生活レベルを押し上げようというプロジェクトが現地では進んでいます。
そのプロジェクトの成果が「HOA SELECT2021」であり、「Mai Coffee Farm×Future Coffee Farm Winey-Honey」なのです。

また、もうひとつ注目すべきベトナム産スペシャルティアラビカ「Lang Biang Coffee」についてです。
このコーヒー豆を生産している農園にはベトナム在住の日本人・山岡清威さんが携われています。



山岡さんは、ベトナムホーチミンにバブロスコーヒーというカフェを経営されている方でありながら
このLang Biangのコーヒーのおいしさに魅せられ、この農地へ移住までしてしまった人物です。
ホアさんやトイさんとも親友であり、ベトナムコーヒー農家の生活の上昇のために尽力をされている方です。

山岡さんともfacebookのメッセンジャーで色々とおしゃべりをさせて頂き、農家の実情を教えて頂きました。

このLangBiangは清らかな山水に恵まれていながら、上記のように農園を手放す農家さんが多いのだそうです。
ベトナムでは珍しい高山地に位置する農園では、スペシャルティコーヒーを栽培するのに適した環境があります。
日中は暖かく、夜は寒い。この寒暖差が、おいしいコーヒーチェリーを育てる最高の条件だと言われています。
山岡さんは、そんな最高の環境の中で、おいしいコーヒーが採れるのにやめてしまう人が多いなんて「もったいない」という想いで
この農家さんの地帯へ移住を決め、農業に従事されていうのだそうです。



STANDARTというコーヒー専門誌で、山岡さんの特集が組まれています。
その中で、山岡さんは”生活を変えてまで誰もやらないでしょ?だから僕がやるんですよ”と書かれていました。
痺れました。

このLang Biangのコーヒーをすでに召し上がって頂いたお客様にはわかっていただけると思いますが
このコーヒーは本当に香りも味も、そのすべてが「美しい」のです。
雑味が一切ありません。農家さんがどれだけ丁寧な仕事をされているかが、目の前のカップから感じ取っていただけると思います。
商品ページに詳細に、コーヒー豆に関する情報は書いてありますので、そちらをご参照ください。






僕の周囲にも、コーヒーの味なんてわからないから、”なんでもいい”という人もいます。
もちろん、全ての人にとってコーヒーが大事なものではないということは理解できます。
でも、僕は思うんです。

商売をする側にも倫理的なアクションが求められますが、同時に消費者側にも倫理的な消費が求められると思うんです。

私たちの国もデフレの状況が続き、不景気が続いています。
そんな中「安いことがすべて」という風潮が強いことは否定できません。

でも、ちょっと考えてみると、それはまわりまわって、自分に影を落とすことになることは火を見るよりも明らかです。
その皺寄せが起きているのが我が国の実情ではないでしょうか。

倫理的でないビジネスは、倫理的な消費行動によって淘汰されるべきです。
目の前の利益は、10年後20年後の不利益になりうるものあるということを忘れてはなりません。

もちろん、僕自身も倫理性を失えば、淘汰されうる対象となることを忘れてならないと自覚しています。

僕は、幸せなことにこうして現地のコーヒー農家さんや現地の専門家の方々と
直接コミュニケーションを取ることができ、さまざまなことを教えてもらっています。
当然のことながら、彼らの情熱は、そのまま僕の焙煎活動への情熱へもつながっています。

そして、もうひとつ、大事なことがあります。
どうしても、日々自分たちが生きることで精一杯になってしまうのですが
僕たちの「生きる」という行為は、次世代につながる行為です。
つまり、いつかは次世代に引き継ぐ営みです。

今は僕たちが主役で引っ張っていってる世界も、いつかは子供たちに引き継がれます。
現状起きている問題点を、今解決に向かわせなければその負い目をこのかわいい子供達に背負わせてしまうことになってしますのです。







僕たちがこの世界から去った後も、世界は続いているという至極当たり前の事実。
当たり前過ぎて、真剣に考える時間は少ないかもしれませんが、僕はこの写真の子供たちの笑顔を見たときに
自分だけの問題ではないのだ、ということを改めて強く感じました。

各方面のプロが多面的に農家さんとタッグを組むことで、コーヒー豆の品質を高めて、
私たちにおいしいコーヒーを届けることで、農家の収入を高め、そしてその生活のクオリティが高まるように努めています。
益岡もその一助を担わせてほしいとの想いから、このブログを書いています。あまりに非力なことは自覚をしていますが、それでも彼らのまさに情熱に触れると、どうしても何かやらせてほしいと思ってしまいます。

ちょっと固い内容になっちゃいましたが、でもこれが「おいしいコーヒーの真実」です。

masuocafeは、まだまだ新米のコーヒー豆ショップです。
ちいさなちいさな存在です。でも、僕は遠い未来を見据えて活動しています。
こんなちいさなレベルの「今」から、その「未来」を見据えることに意味があると考えています。

きれいごとを書きますが、
世界の誰かが笑うとき、他の誰かが涙を流す世界は、誰がなんと言おうと間違っています。
僕たちは、みんなで肩を並べて、満面の笑顔で、大笑いをしなければならないのです。

今、世界は大きな混沌の中にいます。そして、過渡期と言えるでしょう。
僕は変わりたいと思うし、変えなければならないと思います。

目の前の一杯のコーヒーは、間違いなく世界とつながっています。
多くの問題を孕んでいるのは事実ですが、一方で大きな大きな希望をも孕んでいることも間違いないのです。